〒659-0095 兵庫県芦屋市東芦屋町3-9

芦屋のクラシック音楽コンサートホール
2021.07.25
茶黒くくすんだ色のチラシに、「藤森亮一がピアニスト横山美里とともに追い求めるチェロとピアノの美の新境地」とあった。この色調が藤森の求める美の新境地にマッチしているのだろうか。昨日、Salon Classicで弾いた二人の演奏を聴いて見事にマッチしているのを発見した。バッハの無伴奏チェロを聴いていると、そこには艶々しさよりもどこか枯淡の味が漂う。天の岩戸から天照大御神が現れる序曲に映った。次のショスタコーヴィッチのチェロソナタ、続くプロコフィエフのチェロソナタ、これら二人の作曲家はどちらもロシア人、このチラシのどす黒さにどこかロシアを暗示している部分はないか。重厚な精神性を宿す土壌を見る思いがした、ショスタコに耳を澄ましている時、私に不意に閃いた形容詞は幽玄だった。幽玄といえば能だが、まさにこれはロシアのお能だった。消え入るような無音に近い有音。ピアノが囃子のように後方で響く。そこに醸し出されるのは豊穣にして静寂に満ちた優雅な世界だった。次のプロコもそれに近い。ショスタコが陰ならこちらはどちらかといえば陽。チェロとピアノが掛け合う滑稽味のある狂言といったところか。私には藤森が追い求めた美の新境地とはこのロシア版、能と狂言の世界に映った。
2021年7月25日(日) 14時開演(13時半開場)
チケット:5000円(税込)要予約。申込先着30名様限定
プロコフィエフ「チェロソナタOp.19」