95.新春コンサート
漆原啓子・朝子姉妹のヴァイオリン・デュオ
ピアノ: 津田裕也(東京芸大在学中)
元旦の雪混じり日と違い、くっきりと晴れ亘った4日、富士山に迎えられ新春初コンサートを行なった。漆原姉妹にとっても今年の弾き初めとなった。
2003年1月4日(土)午後3時~SalonCollina
今日の曲目は来月(2月)7日、浜離宮朝日ホールで演奏されるものとほぼ同じで、
玄人好みのものかも知れない。二つのヴァイオリンのための曲自体、数少なく、
あまり知られていないが、今日の演奏を聴いて魂が揺り動かされる想いがした。
薄金色のドレスに同色シューズの啓子、青緑のドレスに銀色シューズの朝子、
二人が現われるとオーラが光る。同じ方向に持ち上げられた腕、同じ角度に振り
下ろされた弓、それらが小刻みに斜め上下に動く。左に高い主旋律、右に低い
従旋律、音の波紋がホールに広がる。 空間を引き裂くような音、空間を撫でるような音。私は今、二人のヴァイオリンの胴体内にいて、私の魂柱が弓でこすられ唸って
いる。武満徹の「揺れる鏡の夜明け」は幽玄の世界に満ちている。亡霊でも出てき
そうなおどろおどろした世界に数条の音の絵筆が走る。陰にこもった光だ。それが
音と音の間の暗闇の世界へ私を誘い、私の内面世界をえぐり出す。暗い絵に対面
している境地だ。これが陰の音なら、シュポアは陽の音だ。ただし甘味というものではない。それは私の魂を決してやさしく包みはしない。むしろ浅く深くこする。そのうちに肩がほぐれるように魂がほぐされ緊張がとれる。そして、あの最後、あの最後、あの
サラサーテの、あのナヴァラの最後が歓喜のうちに私の魂を高みへと高みへと引き上げてくれる。もう一つのヴァイオリンの音の世界へ誘ってくれた。
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